軍隊宿舎風居酒屋(군대 내무반 스타일의 술집)
軍隊宿舎風居酒屋(군대 내무반 스타일의 술집) アパートから歩いて10-15分くらいのところに、ナウン洞という場所があった。繁華街というほどでもないけど、飲食店や少し大きめのスーパーなどが集まっていた。わたしたちは、時々このナウン洞に出かけては、ごはんを食べたり、お酒を飲んだりした。 中でもお気に入りのお店は、内装が軍隊の宿舎風の居酒屋だった。通路を挟んで、両側に座席があるのだが、壁にはずらっとロッカーが並んでいて、軍服がハンガーにかけられ、オブジェとして銃が飾られていた。除隊して2年ほどだった夫は、懐かしいのと、思い出したくないのと、落ち着かないのとで複雑な心境のようだったが、わたしにはすべてが新鮮で、行くたびにわくわくした。 韓国男性は、大学2回生くらいで休学して軍隊に行く人が多い。いかに軍隊が過酷だったか、韓国男性に語らせたら、きっと時間がいくらあっても足りないだろうと思う。今は期間も短くなり、スマホが持ち込めたり、お給料が増額されたり、待遇や環境がかなり改善されているようだが、夫が軍人だったころは今とは比べ物にならないくらい大変だったという。夫は、陸軍だったので、期間は2年2か月。お給料は月に860円程度。訓練中に不慮の事故などがあったとしても、遺族に支払われる保障はごくわずかなものだったそうだ。また、ドラマ「D.P.脱走兵追跡官」など見ていても、夫に言わせると、描かれているエピソードは、誇張された完全なドラマの世界でもないらしい。 さて。この軍隊宿舎風居酒屋だが、メニューはいたってふつうだった。軍隊風の給食とか出てきたらおもしろかっただろうと思うのだが。ただ、ひとつだけびっくりしたメニューがある。メニューと言えるほどでもないのだが、インスタントラーメン。お湯でゆがくタイプではなく、そのままかじるタイプのラーメンである。適当に割ったラーメンに添付の粉末のスープを少しずつ振りかけて食べるのが正式な方法?だ。歯ごたえはカリカリ・ポリポリしていいが、正直美味しいのかどうかは今でもわからない。安いのと、雰囲気に合うのとでよく注文したが、よく喉が渇くのでビールが進んで仕方ない。あれは、お店の戦略だったのだろうか。ちなみに、このタイプのラーメンは今も韓国のマートで販売されていると思うので、よろしければぜひお試しください。 軍隊とは関係ないが、このお店のトイレは外にあった。いったんお店の裏口?から外に出ると、駐車場のような空地があってトイレはそこにあった。古いトイレで、たしか和式だったと記憶している。お水を流すときは、天井からぶら下がっている紐を引く。すると頭上に設置されているタンクからお水が流れてくるシステムだ。足でペダルを踏むか、レバーで流すタイプのトイレしか知らなかったわたしには、かなり驚きだった。設置されているといっても、しっかり固定されているふうでもなく、またタンクも黄ばんだ古いプラスチックの箱状のものだったので、頭上からお水が降ってこないか、タンクが割れないか心配になり、用を足している間ずっとタンクを見上げて確認していたことを思い出す。 そんなトイレも含めて、わたしにはすべてが楽しいお店だったが、今思えばお客さんの入りはよくなかった。いつ行っても数組だけだった。だからなのか、いつの間にか閉店してしまって、心底残念だった。 韓国の特に男性には、見慣れた光景だし、美味しいお酒を飲みながらの友人との楽しい時間を、敢えて軍隊を思い出すような場所で過ごしたくもないんやろうなぁと推測する。 だが、日本からの観光客なんて一人もいない群山だったが、日本人が来ればこのお店を気に入ったと思うし、日本でこんな感じのお店があったら、絶対大人気になるだろうと思う。できれば、このお店そっくりそのまま日本に持って行けないか、わたしは、あの頃と変わらずに実は今もそのことを真剣に考えているほどだ。